戦後自虐史観派の正体を見た!

 田母神問題ですが、どうも面白いことになっているようですね。批判派はすっかり静かになっているというのに、いやはや擁護派は相変わらず元気です。なぜ批判派が静かになったかといえば、問題は田母神氏が自らの立場を弁えないで行動をしたというところであって、責任をとって辞めれば、これ以上突っ込む必要はほとんどないということです。内容自体は、別によくいる戦後自虐史観派の内容と変わらないし、改めて突っ込む価値すらありません。どうやら批判派がそういう評価をしていること自体、擁護派には分からないようですね。
 おっと、補足を忘れてた。「戦後自虐史観派」とは、私なりの造語です。他人を自虐史観と言って非難する人間は、実は単に自身が「戦後」を自虐しているに過ぎないと思えるので、「戦後自虐史観派」と名づけました。ネット右翼とかプチ右翼という言葉の方が一般的なのかも知れませんが、個人的には、しっかりした考えの右翼もたまに見かけますので、一緒にするのは失礼かなと。「戦後自虐史観派」ならば、彼らの行動をそのまま表しているので、妥当なネーミングなのではないかと思っています。
 たまたまこの時期、二つの擁護派の文章を読みました。いや~、久々に笑えるトンデモ文章でしたね。
 と学会も、最初の方はトンデモ本への愛が感じられて面白かったのですが、最近になるほど毒ばっかり鼻につくので新刊は買っていませんでした。まぁ、自分でわざわざ探して読むのも金と本の置き場の無駄なので、ちゃんとした(と言うのも変ですが^^;)トンデモ本をこのところ読んでいませんでした。
 その文章とは、ひとつは「諸君!」4月号の中の『「田母神俊雄=真贋論争」を決着する』でもうひとつは「わしズム」の「田母神論文を補強、擁護!」です。

 前者は歴史学者の秦郁彦氏と評論家の西尾幹二氏の対論で、後者は小林よしのり氏が言いたい放題言っています。いや、本当に笑えますよ、どちらも^^。ある意味日本人必読の書ですね。

 いや~西尾幹二氏、すごいですね。冒頭から飛ばしています。まず自分が歴史の専門家ではないと告白しています。まぁ、それはいいでしょう。馬鹿な学者もいれば、賢明な素人もいるでしょうから。その後従軍慰安婦や沖縄戦についての秦氏の研究を持ち上げたあと、本題に入ります。長くなるので引用はしませんが、どうやら西尾氏は世界が大きく変わり、日本人のアイデンティティーが保てないから歴史の評価のしかたを変えるというのが望みらしいですね。どう考えても学問としての「歴史」ではないですね。言わば政治的な「歴史」です。秦氏はあくまでも歴史学者ですから、とうぜん前者の立場になるでしょう。歴史学者であるのなら、歴史的な資料を探し、調査し、それに基づいて合理的な評価を下そうと努力するでしょう。ところが西尾氏が欲しいのは歴史的な事実ではないようです。日本人に共通したアイデンティティーを持たせるための道具ということでしょう。
 秦氏は基本的に、あくまでも歴史学者としての立場でものを言っていたのですが、一度政治的な見地がぽろっと出ました。「こういうものは日米関係にも決してよい影響を与えません。」と(どうもこのあたり、文脈が唐突なので、「こういうもの」が何をさしているのかいまいち不明です。あとでまとめるときに何か省略があったのかもしれません。)。その時に西尾氏はそれを政治家が言うべき言葉で、歴史家が言うべき言葉ではないと一蹴します。
 ずいぶん不公平な話ですね。歴史家は政治的な観点でものを言ってはいけないのに、評論家はどんな観点でものを言ってもいいのですか? さらに後のほうで歴史学の専門家的見地を信用しないなどと言っています。いったい歴史学者になにをしろというの~^^;。
 要するに西尾氏「事実」と「評価」を完全に混同しているんだと思います。しかも事実から評価へいく思考過程が硬直していて、他人が同じ事実から別の評価を下す可能性があるということが理解できない。まぁ、この欠点は「戦後自虐史観派」共通の欠点なのかもしれませんがね(笑)。

 ルーズベルト陰謀説もずいぶん飛ばしていますね~。ルーズベルトは日本が真珠湾を攻撃してくるのを承知の上で、あえて太平洋艦隊を攻撃させたそうですね。そういう説があることは初めて知りました。これについてたまたま「わしズム」で小林氏の見解が載っていました。小林氏もかつては信じていたが、トンデモ説であると分かったとのことです。実際はどうなのでしょうか?
 とりあえず、西尾氏の言うとおり事実だとしたら、ルーズベルトはひどい人間ですね。普通なら自国民を故意に大勢犠牲にすると分かっているようなことはしませんが、西尾氏によるとそういうことをするほどの人格異常だったそうです。なんと、大学時代に暗号で日記を書いていたんだそうです(笑)。
 いや~、暗号で日記を書くのは確かに少し変わっているかもしれませんが、それだけでルーズベルトが人格異常と断言し、それをもとにルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていたとするのは・・・。
 たとえば、織田信長は若いとき「うつけもの」と呼ばれていたと文献に残っています。単にそれだけで信長の人格をうつけと決め付けてしまうと、その後の天下を取った信長に行き着くでしょうか? 西尾氏が言っているように、歴史の中で関係した人間の心理的な背景を考えることは必要ではありますが、心理的な背景を正確に捉えるためには、膨大な情報が必要です。現代に生きている人間のものを集めるのも大変なのに、資料の少ない歴史上の人物の心理を断定するのは、慎重になるべきです。秦氏が西尾氏に心理的な要素は証拠がないという指摘をあっさり認めちゃっています。本来はルーズベルトが真珠湾攻撃を知っていたということが事実かどうかをまず検証し、事実だと確定した時点でルーズベルトの心理を考える材料とすべきでしょう。事実がまず先にあって、それから心理が推測されるのであって、逆ではありません。
 ちょっと下世話な例を持ち出しますと、実は私、女性にむちゃくちゃもてるのです。もちろん恋愛感情は心理的な要素ですから、証拠なんかありませんが。周囲の女性の心理的な背景を考えると、その多くが私に惚れているのは間違いありません(笑)。
 なんて私がおおっぴらに言ったら、普通まわりの人は「被愛妄想」ととるでしょうね。ましてやその考えに基づいて行動をしたら、へたをすればストーカーです。どんな場合にも、安易に人の気持ちを分かった気にはならないほうがいいと思いますがね(笑)。

 西尾氏は秦氏が対論中戦勝国側に立って日本を裁いてるなどと評価していますが、私はこんなことを言われた秦氏に同情しますね。秦氏の立場は基本的には「どっちもどっち」で、概ね私も同感です。秦氏はことさら日本を裁いているわけではなく、そもそも西尾氏が一貫して戦勝国側を裁くかのような発言を繰り返すので、バランスをとるため日本の問題点を指摘しているのです。片側に傾いた天秤のバランスをとろうと思ったら、真ん中に錘を乗せててもしかたありません。反対側に錘を乗せなければならないでしょう。秦氏が対論でしていることは、そういうことです。

 最後に、編集後記で編集者は対論について、「歴史叙述の価値を決めるのは実証性か、あるいはその背後にある思想か、根本的対立点は哲学的レベルに位置します。」などと書いています。「本気で言ってるのか?」と叫びたい気分ですね。実証性に決まっているでしょう。さいごに「さて、読者の判定は‐‐‐。」などと結んでいますが、西尾氏に軍配を上げるような日本人が多ければ、つくづく私は日本が劣化したんだと思いますね。

 長くなりましたので、小林氏への突っ込み次回に。
 

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この記事へのコメント

ゆきおっち
2009年04月24日 11:22
お久し振りです
貴殿のブログは拝見して居りましたが
この未曾有の世界的不況の中で自身も少し余裕が無くなりましてコメントから離れていたのが現状です
(テーマがテーマだけに…)しかしルーズベルト陰謀説なんて見ると
なんだか懐かしくて…
『裏口からの戦争』ってヤツですよね?
私はルーズベルトの陰謀と言うより
戦略だと思うんですが…
事実、当時も現代も各国が自国の国益の為に
もしくは
自国の損失が少なくなるよう外交するワケですからそして外交のカテゴリーの中には戦争も含まれるし…戦争は外交カードでもあるのだ
ゆきおっち
2009年04月24日 13:40
小説の世界なら面白い
陰謀説も
討論や論議に持ち込むと
途端に下世話な噂話しに
なってしまい
結局、何でも陰謀になってつまらなくなります
国際外交は権謀の限りを尽くすパワーゲームな側面もあるので
陰謀なんてあって当たり前な事
それを
陰謀だ!陰謀だ!
ズルい!ハメられた!
なんて
アンタはお子様かよ!!
と突っ込みを入れたくなります
秦氏と西尾氏の討論は
それこそ大人と子供の議論実証主義な歴史家と
ロマン主義な評論家では
話しが噛み合わないのは
当然な成り行きで
西尾氏が駄々をゴネル構図となります
ゆきおっち
2009年04月25日 00:37
陰謀説は
後付けで何とでも言えますそれに実証もないし…
実際は
米国大統領は欲していたが日本との戦争は大義名分がないと出来なかった…
だが
日本からの先制攻撃作戦
及び米軍への先制攻撃を伴う戦闘があれば大義名分になる…
戦争になれば米国勝利を確信
それを踏まえて対日外交を展開
以上はルーズベルト大統領やハル国務長官の発言と関係者の証言により実証済みさらに思惑通り日本軍からの先制奇襲攻撃があり
しかも最後通告手交前だったオマケツキ
しかし
場所が真珠湾だったのは意外と想定外だったのではないだろうか
2009年04月25日 01:35
 本当に・・・。秦氏と西尾氏の議論は大人と子供の議論ですね。
>米国大統領は欲していたが日本との戦争は大義名分がないと出来なかった…。だが日本からの先制攻撃作戦
及び米軍への先制攻撃を伴う戦闘があれば大義名分になる…
 個人的には、ここ重要だと思います。要するに、日本は説得力のある大義名分を提示できず、アメリカは提示できたということでしょう。そこがそもそも、日本の躓きの元ですね。大東亜共栄圏構想などというのは、実際はむしろ、当時の帝国主義的な世界秩序を乱す行為に他ならなかったと思いますし。
 ある意味、当時のアメリカと日本も、大人と子供の関係に近かったのかも知れません。
ゆきおっち
2009年04月28日 08:25
コメント返してくれてありがとうございます
日本の大義名分が
大東亜共栄圏なのですよ
勿論、裏の看板には
盟主大日本帝国に拠る
大東亜新秩序経済圏の創造と書かれているはずですが…
たしか大東亜共栄圏とは
日米開戦前後くらいからだと記憶しているが違うかな?
満州国独立のスローガン
五族※※※※(忘れた)
だったような
日本と満州と蒙古と朝鮮と台湾が五族だったかな?
大東亜になると
アジアの国々の総称だったよな…
日本・中国(南京政府)タイ・ビルマ・インド・満州
インドネシア・フィリピンベトナム
ゆきおっち
2009年04月28日 12:26
大東亜共栄圏のスローガンは欧米列強の圧政と植民地支配からの解放と独立の支援
大東亜の広大な地域に経済圏を創造する
そして皆で豊かに繁栄しましょう
と唱えていました
既得利権を持っていた欧米列強諸国にとっては秩序の破壊者である日本は脅威であります
第二次世界大戦は
先発組・植民地支配諸国
vs
後発組・植民地支配諸国
との争いの見方もあります先発組の統治は苛酷なものが多く(英国は巧妙だった)日本が同じ事をすれば
単なる覇者交代になってしまう為に大東亜共栄圏の大義名分に沿った軍政が行われたようだ
ゆきおっち
2009年04月28日 13:53
南方に送られた兵達も
自分達が侵略ではなく解放の為来ている
との意識もあり
戦後そのまま残って
独立戦争でインドネシア側で戦った日本残留兵も
多くいたようだ
設備投資など環境整備も施行された
しかしあくまでも日本の
戦争完遂に必要だったのは疑いようがなく
その為の大義名分なのは
明らかなんですから…
南方諸国の解放と独立の
きっかけになったのと
その軍政が穏やかだったのは事実なんだろうが
それを以て侵略ではないとの主張は一種の詭弁では
ないだろうか
少なくとも旧宗主国からみれば侵略でしょう
2009年04月29日 00:59
 基本的には同感ですね。あの時代、本当に単なる開放のためだけに日本が行動したのだとしたら、逆に日本は底抜けのお人よしということになると思います。日本が国益のために侵略したというのなら、それはそれで一つの決断でしょう。要するに資源獲得のためなのは明らかです。当時は大義名分が必要だったとしても、それはすでに過去のことです。今は国益のための侵略であった事実を素直に認め、同時に過去植民地支配をしたすべての国に対して、過去の過ちを認める見本となれば、むしろ日本にとってプラスとなると思います。
ゆきおっち
2009年05月02日 00:03
まぁ
お人好しなんて言うと
アジア民族解放の理想の為或いは
日本の誤った道の懺悔の為に
インドネシアの独立戦争を戦った残留日本兵の方達に申し訳ないような気がしますが…
どちらにしろ
人ではなく
国の意味でしょうからね
どーでも良いことですが
今でも日本は侵略戦争を謝り続けていますよ
インドネシア首相は
もう謝らなくてもヨイ
と言ってましたがね
当時は日本も善政をしたと思っていても
ボランティアでしたワケでもないし
当のインドネシアが侵略されて迷惑したと言うのだからしょうがないでしょ

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